2013年2月25日月曜日

LIVE ALBUM ( GRAND FUNK RAILROAD )



LIVE ALBUM (GRAND FUNK RAILROAD ) / 1970年11月発売




雷雨のなかでの後楽園球場コンサートを伝える新聞記事(1971年7月18日)




GRAND FUNK RAILROAD ( GFR ) はアメリカが誇る、大音量が売り物のハード・ロックバンドで Mark Farner (Vo,G), Don Brewer (Ds,Vo), Mel Schacher (B) の3人からなる3ピースバンドとして 1969年にアルバム「On Time」でデビューしました。デビュー直後は LED ZEPPELIN の全米ツアーに前座として同行して知名度をぐんぐん上げたばかりでなく、ある時 そのすさまじい歌と演奏で聴衆を熱狂させてしまったために、LED ZEPPELIN のマネージャーのPeter Grant があわててステージから降ろさせたという逸話が残っています。 前座なしで延々と続く LED ZEPPELIN のコンサートはこのことがあってから始まったということです。

日本においては 初来日時の1971年7月17日に激しい雷雨の中で行われた後楽園球場コンサートはロック伝説の1つともなっています。

彼らのサウンドは 以前に紹介したブリティッシュ・ロックの王道ともいえる CREAM, LED ZEPPELIN, DEEP PURPLE と比べると 繊細さに欠け、テクニック的にも優れたものは持ち合わせているわけではありません。GFR がデビュー当時からよく比較された相手が 不幸なことに LED ZEPPELIN で、評論家からは田舎バンドとかイモバンドと散々に酷評されました。そして GFR が好きだなどと言えば ロックのわからないやつだと言われたものでした。しかし、比較された相手がロック界の頂点に君臨するLED ZEPPELIN ではパワー、テクニック、創造性のどれをとっても勝てるものではありません。さらに どこから見ても格好良いRobert Plant や Jimmy Page と短足のMark Farnerでは初めから勝負になりません。にもかかわらず、現実には バンドのパワーと大音量で前座が 主役の地位を脅かしてしまったのです。

GFRの歴史は 辣腕プロデューサーのTerry Knight と活動していた前期と Knight と決別してからの後期に分けられます。後期には大ヒットとなったWe're an American Band やThe Loco-Motion の様なヒット狙いの曲も多いのですが、私は3ピースとして活動していた前期の荒々しい、パワーに満ち溢れていた時代の曲を好みます。

ここで紹介する「LIVE ALBUM」は1970年に発売されたもので 彼らの初期の演奏が収録されています。演奏はブリティッシュ・ロックグループの様な神がかりなテクニックはありませんが、全曲にわたって Mel Schacher のブイブイ歪むベースに引きずられた重厚なサウンドが特徴です。彼は「ベースの役割は音圧をかせぐことだ」と言っており、愛用のフェンダー・ベースのピックアップをギブソンのハムバッカー・ピックアップに換えて重厚な音作りをしていたそうです。このアルバムを聴いているだけで大音量だというのがよくわかりますし、すごい音圧で音の塊がそのままぶつかってくるというロックバンドの理想的な姿を楽しむことができます。これぞアメリカン・ロックといえるライブ・アルバムです。
オープニングの「Are You Ready 」や「Paranoid」はギターはあまり目立たないもののリードを取っているかのようなベースに引きずられて重量級のサウンドが爆発する今となってはなつかしいロックバンドのスタイルを聴かせてくれます。そしてハード・ロックの古典ともなっている彼らの傑作「Heart Breaker」はアルバムからシングルカットされ、後のミュージシャンにも大きな影響を与えました。
さらに彼らの代表曲でANIMALSの名曲のカバーである「Inside Looking Out」は全く別の曲とも聴こえるくらいアレンジがすばらしく、Mark とDon のボーカルの掛け合いもなかなかよくできています。

全編を通じて Mel Schacher のベースが目立ってしまう演奏ですが、上手いとか下手とかの問題を通りこして 当時の人々(今は50歳半ばから60歳後半になっている)を熱狂させたバンドのパワーを感じ取っていただきたいと思います。21世紀になってこれほどのパワーで人々を熱狂させるバンドが誕生したでしょうか。


GRAND FUNK RAILROAD (左からDon,Mark,Mel)