2015年5月14日木曜日

2015年4月28日 Paul McCartney 日本武道館公演







Sir Paulの長年の功績に対する主催者からの感謝の演出がこれでした




B1ブロック、前から3列目でした









早くも武道館公演のboot CD登場です(上・下)





2015年4月28日、Paul McCartneyの日本武道館公演に行って来ました。
THE BEATLESとしての初来日から49年ぶりにPaulが武道館のステージに立つということで注目されたコンサートでした。また全国のニュースでも多くの時間を割いて報道されました。何万人もの人が コンサート終了から2週間経った現在でも いまだ興奮と感動が覚めず、幸せな気分に浸っているに違いありません。Rock'n Roll  の力は偉大です。

公演は予定時間よりかなり遅れて20時頃にはじまり、22時前に終わりました。全30曲とドーム公演に比べて演奏曲数も少なくなっていました。しかし 会場が小さいだけに観客の興奮と熱気もじかに伝わってきました。後半Let it beの演奏をポールが始めると、武道館の観客全員が事前に装着してたリストバンド型ライトが一斉に光りポールを驚かすという主催者が用意したサプライズで ポールが感動して涙ぐむ場面もありました。
また アルバムではJohnが歌っていた One After 909, Being For The Benefit Of Mr.Kite や 世界で初めて披露するという Another Girlを聴くことができました。

コンサートも最終日でPaulの声の状態もベストの状態ではありませんでしたが、1万人の人々と感動を共有できました。あの伝説の人がすぐそこにいたのです!。まさか 自分が生きてるうちにYesterday を生で聞けるとは思っていませんでした。

THE BEATLESのLennon-McCartneyは稀代のヒット・メーカーとされています。彼らの多くの曲に共通するものは ① Upbeatのテンポの曲が多い ②覚えやすいシンプルな歌詞である ③覚えやすいシンプルなリフを持った曲である ④演奏時間が3分以内である  という重要な共通点があります。

60年台後半から70年台前半に我々を熱狂させてくれたような音楽は今はあまりありません。もう一度原点に戻る「GET BACK」必要があるかも知れません。






(武道館セットリスト)

Can't Buy Me Love
Save Us
All My Loving
One After 909 ※日本公演本編では初披露
Let Me Roll It
Paperback Writer
My Valentine
Nineteen Hundred and Eighty-Five
Maybe I'm Amazed
I've Just Seen A Face
Another Day
Dance Tonight ※日本初披露
We Can Work It Out
And I Love Her
Blackbird
New
Lady Madonna
Another girl ※世界初披露
Got To Get You Into My Life ※久しぶり
Being For The Benefit Of Mr. Kite!
Ob-La-Di, Ob-La-Da
Back In The U.S.S.R.
Let It Be
Live And Let Die
Hey Jude

Yesterday
Birthday ※日本公演本編では初披露
Golden Slumbers / Carry That Weight / The End


2015年4月9日木曜日

THE DARK SIDE OF THE MOON - 狂気 ( PINK FLOYD )



THE DARK SIDE OF THE MOON (PINK FLOYD) / 1973年3月発売





THE DARK SIDE OF THE MOON は1973年に発売されたPINK FLOYD の7作めのスタジオ録音アルバムです。THE BEATLES で有名な英国のAbbey Road Studio で録音されました。
1973年に発売されるや 全世界で大ヒットを記録し、アメリカ・ビルボードのBillboard200 において1973年4月28日付けでPINK FLOYDとしては全米チャートで初の1位を獲得、またBillboard200に15年間(741週連続)にわたってランクインし続け、さらに発売後2年を経過したアルバムのみのチャートであるカタログチャートでは30年以上(1630週以上)に渡ってランクインするというロングセラーの記録を打ち立てた歴史的アルバムで現在も記録を更新中です。このため 「年代を問わない 20世紀が生んだ文化作品」とも呼ばれています。世界中での売り上げ枚数はおそらく世界一で、統計上では誰かが常にこのアルバムを聴いており、イギリスでは5軒に1軒はこのアルバムを所有していることになると言われています。

アルバムジャケットはヒプノシス(Hipgnosis)によるもので 非常に印象深く、ロック史上 最高傑作の一つと評価されています。

このアルバムは すべての人間の内面に潜む「狂気―The Dark Side Of The Moon」をテーマにしたコンセプトアルバムです。しかし 単なるコンセプトアルバムというわけではなく 「この世で最も完璧なアルバムで アルバム1枚を使ってロック音楽を芸術の域まで高めた」という最高の評価もある、プログレッシブ・ロックというジャンルを超えたロック史に残る不朽の名作です。

このアルバム以降、サウンド面ではDavid Gilmourのセンスが反映されているものの、Roger Watersが全作詞を手掛けるようになったことからバンド内での曲作りのバランスに大きな変化が生まれました。この点でこのアルバムは重大な意味を持つ作品となりました。人間の内面に潜む「狂気―The Dark Side Of The Moon」を描き出すというコンセプトを考案したのもWatersとされています。

この作品はアルバムの最初から最後まで 曲と曲がメドレーでつながり、複数の曲をあたかも1つの作品のようにすることで 人間の一生を輪廻転生するがごとく描いています。Watersによる哲学的な歌詞に加え、それを際立たせる立体的な音作りで完成度の高い作品が出来上がっています。特に笑い声、会話、爆発音、時計の音、レジスターの音、心臓の鼓動音などが効果音として随所に使われていることが本作品の特徴です。
Watersの詞の内容は難解で日本人には分かりにくいので 本作品を聴く場合はサウンド中心になってしまいがちです。なんと言ってもPink Floydのサウンドの中心はGilmour のギターです。この作品では以前の作品に比べてギターの音のdistorsionが強くなり、ブルース色を強く感じさせるものとなっています。

収録曲

 1. Speak To Me : Nick Mason のドラムで作った心臓の鼓動音の効果音

 2. Breathe : ベースの心地よいリズムにGilmour のスライドギターがからみ、何とも言えない浮遊 感を生み出しています。成長することは死に近づくということという不吉な歌詞によって導かれる狂気の世界が始まります。

 3. On The Run : 焦燥感をあおるようなシンセサイザーの音を使った曲

 4. Time ~Breathe : 時計が一斉に鳴り出す効果音に驚かされます。さらにGilmour のギターソロと女性バックコーラスが素晴らしいBreatheへと続きます。

 5. The Great Gig In The Sky―虚空のスキャット : 前半のクライマックスとなる曲で、女性ヴォーカルのスキャットが素晴らしい官能的な曲です。

 6. Money : 出だしのベース・リフとキャッシュレジスターの効果音が有名な曲です。サックス・ソロとギター・ソロがともに素晴らしい出来です。

 7. Us And Them : 強い浮遊感と高揚感が押し寄せて来て 圧倒されます。

 8. Any Color You Like : 後半のクライマックス前のシンセサイザー中心の曲です。

 9. Brain Damage : 狂気は誰の心にも存在するという詞を歌い上げています。バックの女性コーラスが実に素晴らしく、不気味さを演出しています。

10. Eclipse-狂気日食 : 圧巻のラストナンバーで 歌詞がすべてです。









Dark Side of the Moon狂気
A sideA面
1.a) Speak to Me (Mason)
[Instrumental]
スピーク・トウ・ミー

1.b) Breathe in the Air (Waters,Wright,Gilmour)
Breathe, breathe in the air
Don't be afraid to care
Leave but don't leave me
Look around and chose your own ground
For long you live and high you fly
And smiles you'll give and tears you'll cry
And all you touch and all you see
Is all your life will ever be
Run, run rabbit run
Dig that hole, forget the sun,
And when at last the work is done
Don't sit down it's time to start another one
For long you live and high you fly
But only if you ride the tide
And balanced on the biggest wave
You race toward an early grave.


(3:57)
生命の息吹き

吸いこめ 空気を吸いこむのだ
恐れずに 自らの存在を認めるのだ
いくら逃れようとしても
私から逃れることなどできはしない
あたりを見渡し 自らの居場所を選ぶのだ
生きている限り おまえは高く飛びながら
喜びの笑いを浮かべ 悲しみの涙を流す
おまえの触れるもの そして見るものすべてが
おまえの人生そのものなのだ

走れ 臆病なウサギよ 走るのだ
照りつける太陽も忘れ 穴を掘りつづけるのだ
掘り終えても 腰をおろして休んでいてはいけない
すぐに次の穴を掘りはじめるのだ
生きている限り おまえは高く飛びつづける
もし 押しよせる波にうまく乗ることができ
一番大きな波にその身を任せたとしても
その行く先はおまえを待ちうける墓場の入口だ
2. On the Run (Waters,Wright,Gilmour)
[Instrumental] (3:31)
走り回つて

3. Time (Waters,Wright,Gilmour)
Ticking away the moments that make up a dull day
You fritter and waste the hours in an off-hand way
Kicking around on a piece of ground in your home town
Waiting for someone or something to show you the way
Tired of lying in the sunshine staying home to watch the rain
You are young and life is long and there is time to kill today
And then the one day you find ten years have got behind you
No one told you when to run, you missed the starting gun
And you run and you run to catch up with the sun, but it's sinking
And racing around to come up behind you again
The sun is the same in the relative way, but you're older
And shorter of breath and one day closer to death
Every year is getting shorter, never seem to find the time
Plans that either come to naught or half a page of scribbled lines
Hanging on in quiet desparation in the English way
The time is gone the song is over, thought I'd something more to say

Home, home again
















Breathe - Reprise

I like to be there when I can
When I come in cold and tired
It's good to warm my bones beside the fire
Far away across the field
The tolling of the iron bell
Calls the faithful to their knees
To hear the softly spoken magic spells.

(7:05)
タイム

倦怠にまみれた一日を刻む時計の音
おまえはただ無雑作に時を浪費していくだけ
故郷のちっぽけな土地から出ようともせず
手をひいて導いてくれる誰かか何かを待つだけ

陽だまりの中で寝そべることに飽き飽きして
家の中から降りしきる雨を眺める毎日
若いおまえにとって人生は長く
どんなに無駄に使ってもあり余るほどだ
だが ある日おまえは
10年があっという間に過ぎ去ったことに気づく
いつ走りだせばいいのか 誰も教えてはくれない
そう おまえは出発の合図を見逃したのだ

太陽に追いつこうと おまえはひたすら走る
だが太陽は沈んだかと思うと
やがて おまえの背後から再び姿を現す
相対的に見れば太陽はいつまでも変らず
おまえだけがそうして年老いていく
息切れはますます激しく
おまえは刻一刻と死に近づいていく

歳月は年一年と矢のように過ぎ去り
おまえは息をつく暇もない
おまえの企みはすべて失敗に終り
残ったものはかきなぐった予定表だけ
そして おまえは英国人らしく
ひそかな絶望に身をゆだねていく
時は過ぎゆき 歌もいつしか終りを迎える
もっといいたいことがあったはずなのに……


プリーズ(リプライズ)
我が家 懐かしい我が家にまた戻ってきた
できることなら いつもここにいたい
寒さと疲労とともに帰宅すると
暖炉の傍で体中の骨を暖めるんだ
野原のはるか後方から
鋼鉄の鐘の響きが聞こえてくる
あたかも ひざまづく信者たちに
優しく妖しげな魔法の呪文を囁くかのように
4. The Great Gig in the Sky (Wright)
[Instrumental] (4:47)
虚空のスキャット

B sideB面
1. Money (Waters)
Money, get away
Get a good job with more pay and your O.K.
Money it's a gas
Grab that cash with both hands and make a stash
New car, caviar, four star daydream,
Think I'll buy me a football team
Money get back
I'm all right Jack keep your hands off my stack.
Money it's a hit
Don't give me that do goody good bullshit
I'm in the hi-fidelity first class traveling set
And I think I need a Lear jet
Money it's a crime
Share it fairly but don't take a slice of my pie
Money so they say
Is the root of all evil today
But if you ask for a rise it's no surprise that they're
giving none away

"HuHuh! I was in the right!"
"Yes, absolutely in the right!"
"I certainly was in the right!"
"You was definitely in the right. That geezer was cruising for a bruising!"
"Yeah!"
"Why does anyone do anything?"
"I don't know, I was really drunk at the time!"
"I was just telling him, he couldn't get into number 2. He was asking
why he wasn't coming up on freely, after I was yelling and
screaming and telling him why he wasn't coming up on freely.
It came as a heavy blow, but we sorted the matter out"
マネー

金 たんまり持って逃げるのさ
もっと金になるいい仕事につけば すべて0.K.
金 こいつは最高だぜ
現ナマは両手でしっかり握っておくのさ
新品の車 キャビア ー流ホテルでの白昼夢
フットボールのチームでも買ってやろうか

金 たんまり戻ってくるのさ
おっと ジャック 俺の金に触るなよ
金 こいつは大当たりさ
俺にケチなものなんか押しつけないでくれ
俺は安全確実なファースト・クラスの客人さ
自家用ジェットでも買おうかと思ってる

金 こいつは罪なものさ
平等に分けようぜ
だけど 俺の取り分には手をつけないでくれ
金 こいつはみんなのいう通り
諸悪の根源なのさ
賃上げを要求してみても
そう簡単には通らない世の中さ
(6:23)






2. Us and Them (Waters,Wright)
Us and Them
And after all we're only ordinary men
Me, and you
God only knows it's not what we would choose to do
Forward he cried from the rear
and the front rank died
And the General sat, as the lines on the map
moved from side to side
Black and Blue
And who knows which is which and who is who
Up and Down
And in the end it's only round and round and round
Haven't you heard it's a battle of words
the poster bearer cried
Listen son, said the man with the gun
There's room for you inside
Down and Out
It can't be helped but there's a lot of it about
With, without
And who'll deny that's what the fightings all about
Get out of the way, it's a busy day
And I've got things on my mind
For want of the price of tea and a slice
The old man died

(7:48)




アス・アンド・ゼム

僕たち そして 彼ら
とどのつまり 僕らはごく普通の人間さ
僕 そして きみ
僕らが人間として誤った道を選んだことを
神だけが知っている
背後から“前進!”と叫ぶ声に
前列部隊は次々と倒れていった
将軍は椅子に腰を据え
地図の上の境界線の動きを目で追っていた
黒 そして 青
その違いを誰が識別できるというのか
前進しては また後戻り
結局 最後には堂々めぐりで終っていく
“それは言葉のもつれから始まった戦い”と
ポスター貼りが悲痛に叫ぶ一方
銃を持った男が呼びかける
“わが息子よ
この戦いに加わって勇気と力を発揮したまえ”

傷ついては死んでいく人々
繰り返されるこの惨事を止めることは
誰にもできないのか
なぜ 敵味方に分かれるのか
それが争いの原因であることは
誰にも否定できないというのに‥‥‥
道をあけてくれ 今日は忙しいー日だ
気にかかっていることが山ほどあるんだ
一片のパンと茶代が欲しいために
一人の老人が死んでいったという
3. Any Colour You Like (Wright,Gilmour,Mason)
[Instrumental] (3:25)
望みの色を

4. Brain Damage (Waters)
The lunatic is on the grass
The lunatic is on the grass
Remembering games and daisy chains and laughs
Got to keep the loonies on the path
The lunatic is in the hall
The lunatics are in my hall
The paper holds their folded faces to the floor
And every day the paper boy brings more
And if the dam breaks open many years too soon
And if there is no room upon the hill
And if your head explodes with dark forbodings too
I'll see you on the dark side of the moon
The lunatic is in my head
The lunatic is in my head
You raise the blade, you make the change
You re-arrange me 'till I'm sane
You lock the door
And throw away the key
There's someone in my head but it's not me.
And if the cloud bursts, thunder in your ear
You shout and no one seems to hear
And if the band you're in starts playing different tunes
I'll see you on the dark side of the moon

"I can't think of anything to say except...
I think it's marvellous! HaHaHa!"
(3:50)




狂人は心に

狂気は 今 野原に
狂気は 今 野原に
楽しく遊んだゲーム ひな菊の花輪
笑い声を回想しながら
狂気は小路にその思いを馳せる

狂気は 今 広間に
その数を増やしながら 今 僕の広間に
新聞が床の上に折りまがった顔をくっつけている
それでも新聞配達の少年は
毎日 新聞を放り投げていく

ダムが幾度となく歳月を押し流し
あの丘の上にも住み家がなくなり
お前の頭が暗い予感に破裂した時

お前は狂気の世界に自分を見いだすのだ

狂気は 今 僕の頭の中に
狂気は 今 僕の頭の中に
お前はカミソリの刃を手に持ち
僕の正気を取り戻そうと切り刻んでいく

お前は僕の心の扉に錠をおろし
その鍵を捨ててしまった
僕の頭の中に誰かがいる 僕以外の誰かが‥‥‥

雲が闇を切り裂き 雷鳴がとどろく
お前の恐怖の叫びを聞くものは誰もいない
バンドの仲間が様々な不協和音を奏で始める時
お前は狂気の世界に自分を見いだすのだ
5. Eclipse (Waters)
All that you touch
All that you see
All that you taste
All that you feel
All that you love
All that you hate
All you distrust
All that you save
All that you give
All that you deal
All that you buy
beg, borrow or steal
All you create
All you destroy
All that you do
All that you say
All that you eat
everyone you meet
All that you slight
everyone you fight
All that is now
All that is gone
All that's to come
and everything under the sun is in tune
but the sun is eclipsed by the moon.

(206)
狂気日食

手に触れるものすべて
眼に映るものすべて
舌で味わうものすべて
五感に感じるものすべて
愛しむものすべて
忌み嫌うものすべて
不信を抱くものすべて
育み守るものすべて
捧げるものすべて
分け与えるものすべて
買い求めるものすべて
哀願しまたは借用し または盗んだものすべて
創造するものすべて
破壊するものすべて
行為のすべて
言語のすべて
口に食するものすべて
巡りあう人間すべて
軽んじるものすべて
争いをしむける人間すべて
現在にあるものすべて
過去に埋れていったものすべて
未来にくるべきものすべて
あの太陽の下 すべては調和を保っている
だが その太陽は徐々に月に侵蝕されていく


対訳:山本安見




2015年1月12日月曜日

PINK FLOYD LIVE AT POMPEII ( PINK FLOYD )

PINK FLOYD LIVE AT POMPEII ( PINK FLOYD ) / 1972年9月公開




PINK FLOYD LIVE AT POMPEII はPINK FLOYD のライブを収録した映像ドキュメンタリーです。一般のライブと異なり、PINK FLOYDのライブ・ドキュメンタリー作成目的にイタリアのPompeii にある遺跡で無人の観客という状況で行われたライブです。監督のArrian Maben によるとこの映像盤は ライブ盤と言われているが、実はPINK FLOYDの演奏する姿を描きつつ、一つの世界観を描いた映画といってよい作品なのだそうです。

1972年9月に一般公開されましたが、日本では1973年にNHKの番組「ヤング・ミュージック・ショー」で放映され話題になりました。LD,VHS,DVD は発売されていますが、CDは公式には発売されていません。

この映画ではバンドの当時の新曲「Echoes」の前半と後半を分けてコンサートのオープニングを「Echoes Part 1」として幕を開けました。その後、「Careful With That Axe Eugene」「A Saucerful Of Secrets」「Us And Them」「One Of  These Days」「Mademoiselle Nobs」「Brain Damage」「Set The Controls For Heart Of The Sun」が演奏され、最後を「Echoes Part 2」で締めくくっています。この作品ではDavid Gilmourのギターを中心とした彼らの初期の演奏の完成された形を見ることができます。

ライブ会場をPompeii に選んだというのは大正解だったと思われます。古代遺跡の持つ神秘性とProgressive Rock と言われた彼らの音楽の先進性が映像を通して見事に合致しています。







撮影されたのは1971年10月。約2000年前に建立された円形劇場が舞台となった







MEDDLE - おせっかい ( PINK FLOYD )






MEDDLE - おせっかい ( PINK FLOYD ) / 1971年11月発売



MEDDLE(おせっかい)は前作のATOM HEART MOTHER(原子心母)からちょうど1年後の1971年11月に発売されたPINK FLOYD にとって7枚目のアルバムです。アルバム・ジャケットは前作同様ヒプノシス(Hipgnosis) が手掛けています。公式の発表がないのでよくわかりませんが、裏ジャケットにある巨大な耳と表ジャケットの波紋が最後の曲「Echoes」のイメージを表しているとする解釈もあります。

本アルバムはSyd Barrett 脱退後、初めてバンドのみの手によって作り上げられた完全なオリジナル作品です(前作はRon Geesinがアレンジを担当)。わずか1年前に発表された壮大な組曲「ATOM HEART MOTHER」と同じ組曲「Echoes」を含んだこのアルバムの成功で彼らの人気は決定付けられました。本作品は前作のAB面を逆にしたような構成になっていますが、前作で行ったようなオーケストラとの競演をやめ、録音技術を駆使してロックバンドのみでできる最高の音つくりを目指したことが特徴です。その点でサウンドのダイナミックスさは前作よりもシンプルになってしまいましたが、詩的なイメージはさらに広がり、ボーカルや演奏自体はさらに奥深くなったと感じられます。

前半のメインは1曲目の日本でも大ヒットし、アブドラ―・ザ・ブッチャーの入場テーマ曲にもなった「吹けよ風、呼べよ嵐ーOne Of These Days」です。PINK FLOYD らしい素晴らしい曲で、綿密に計算された録音テクニックの粋を集めて構成されています。特筆すべきは冒頭での不気味なベースによる効果音です。最後の「Echoes」でもそうですが、ベースによる効果音が実にうまく使われていて曲の神秘さを演出しているのがこのアルバムに見られる特徴です。

続く「A Pillow Of Winds」 から「Seamus」 までは前作のB面を構成していた曲と同類でアコースティック・サウンドを中心としたものですが、フォークっぽい曲、ブルージーな曲が多く聴けます。

そしてこのアルバムの大本命は23分27秒におよぶ超大作「Echoes」です。この作品は Progressive Rock の代表作ともいえる名作です。しかもこの作品には難解なところがなく、非常に分かりやすいというのが特徴です。この作品は4つか5つかのパートで成り立つ、いわゆる組曲で前作「ATOM HEART MOTHER」の流れを組むものと考えてよいでしょう。自然の音、電子楽器による効果音のパート、ボーカルのパート、ギター・キーボードが中心となる演奏のパートが組み合わされて1つの壮大な組曲が構成されています。前作でも見られましたが、作品全体に漂う何とも言えない「浮遊感」が聴く人にとって非常に心地よく、23分はあっという間に過ぎてしまいます。

この「浮遊感」を感じさせるサウンドのの最大の主役はDavid Gilmour の弾くFender Stratocaster で、 このアルバム以降のPINK FLOYD のアルバムではGilmour のギターが彼らのサウンドの中心となりました。

そして名曲「Echoes」の誕生が次の名盤「THE DARK SIDE OF THE MOON -狂気」へとつながっていきます。