2012年7月19日木曜日

QUADROPHENIA・四重人格 ( THE WHO )


QUADROPHENIA ( THE WHO ) / 1973年10月発売


QUADROPHENIA ( 四重人格 ) は THE WHO の 6 作目にあたるアルバムです。THE WHO が活躍し始めた 1965 年のイギリスを舞台にし、Jimmy というモッズ少年(モッズ、Mods とはイギリスの若い労働者のロンドン近辺で 1950 年代後半から 1960 年代中頃にかけて流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイル、およびその支持者を指す)の物語を描いたコンセプト・アルバムになっています。Jimmy は多重人格者であり、この少年の心の葛藤を軸に 四つの人格に THE WHO の四人を反映させて アルバムが展開していきます。本作品を基にした映画「さらば青春の光」が 1979 年に公開され、モッズ・リバイバル・ブームをひきおこしています。

Pete Townshend はかつて「 TOMMY 」「 WHO'S NEXT 」「 QUADROPHENIA 」がTHE WHO の傑作だったと述べています。

このアルバムの中で THE WHO のメンバー4 人がそれぞれ歌の中で担当している 4 つの性格は歌詞の中に表現されているはずなのですが、このアルバムで展開されている話は高度の文学的内容らしく、訳詩を読んでも 私にはさっぱり理解できず、真の内容を理解するためには 高度の英語力が必要と思われます。

このアルバムは全 17 曲からなるのですが 歌詞の深い意味を理解できなくても ロックアルバムとして 全く退屈しない曲作りがされています。
海の音から始まる 1曲目に続く 2曲目の The Real Me を聞いた途端、ぶっ飛んでしまいます。リード・ベースといわれる表現がぴったりのJohn Entwistle のベースが踊りまくり、曲の主役となって Roger のボーカルと絡み合い 素晴らしいノリなのです。ベースというのはこういう弾き方もあるのだと感心させられてしまいます。この曲の中では Pete のギターは完全に脇役にまわっていますが、カッティングは正確なリズムを刻み、実に効果的です。この曲だけでもこのアルバムの存在価値はあります。
続く Quadrophenia は美しいギターとシンセサイザーの使い方が素晴らしい曲、そして おなじみの名曲 Cut My Hair 、「僕は一人」と Pete が歌う I'm One、Roger の歌とホルンを使用したメロディーが印象的な Helpless Dancer、穏やかなピアノラインから始まり THE WHO の代表曲としてライブでも必ず取り上げられる 5:15、そして Roger のボーカル、Keith のドラムが爆発し、ベースが再び踊りまくる Doctor Jimmy、この曲では特にシンセサイザーが効果的に使われています。
最後の Love Reign O'er Me は Roger のボーカルが圧倒的で 最大の見せ場をつくり、アルバムの最後を飾るにふさわしい曲と思われます。

全曲 Pete Townshend の作曲ですが、コンセプト・アルバムとして作られただけあって、非常に細部まで練られており、何度も聴くうちに THE WHO の凄さがわかってくるアルバムです。このアルバムを通して感じるのは後で映画で使われることを意識してか 効果音をうまく挿入してあり、さらにシンセサイザーをうまく使用して 4人のロック・グループでは表現できないような壮大なスケールの曲作りをしたということです。
このアルバムが日本では最近まで廃盤になっていたということは信じられないことであり、いかに日本で彼らが過小評価されてきたかを示す事実です。

2012年7月5日木曜日

LIVE AT LEEDS ( THE WHO )



 LIVE AT LEEDS (THE WHO ) / 1970年5月発売(オリジナル盤)
                                              写真は DELUXE Edition ( 2001年 )
                                   





このアルバムを記念してLEEDS大学に掲示してあるBlue Plaque



THE WHO は ライブ・バンドとして有名でしたが、不思議なことに 1983 年の Pete Townshend による解散宣言に至るまでに 公式に発売されたライブ・アルバムは この「 LIVE AT LEEDS 」のみです。

オリジナル盤が発売されたのが TOMMY の発売の翌年の 1970 年でしたが、収録曲は 6 曲で 後の発売 25 周年を記念した「25周年 edition 」では 15 曲に収録曲が増えていますが、いずれの盤にも TOMMYからの曲は収録されておらず、自分たちは TOMMY が全てではないという Pete Townshend の主張が感じられたものでした。そのためか これらの盤はすさまじいハード・ロックアルバムとなっています。
かつて Pete Townshend は 「THE WHO のリード楽器は ドラムとベースで ギターがリズム楽器なんだ」と語っていましたが、Keith Moon のドラム そして John Entwistle のベースの凄まじいことは 実際に聴いてみないと 言葉では表現できないくらいです。80 年代以降のハード・ロックグループでこのくらいエネルギーが有り余った 躍動感のあるロックを聴かせてくれるグループは皆無と言っても良いのではないでしょうか。

2001 年になって「DELUXE Edition 」が発売されましたが、このアルバムは前2 盤の収録曲に加えて なんと アルバム TOMMY の大筋( 4 曲を除く )が ライブで再現されているというものでした。当初の Pete の意図に反して 後から付け加えられたものと思われますが、あの複雑な展開のTOMMY をライブで聴けるということは素晴らしいことです。後になってLIVE AT THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970 というアルバムが発売され、 この中でもTOMMYのほぼ全曲を聴くことができますが、この時の演奏よりもLIVE AT LEEDS での演奏の方が迫力があり、良い出来と思われます。

これらすべての曲が 1ステージの内容だと考えると 凄まじいパワーが感じられ、彼らの演奏能力がいかにすごかったかが推測されます。

このアルバムが録音された時期がバンドの全盛期であったことや、1969 年のアルバム TOMMY の国際的な成功等の要因も伴って、NEWYORK TIMES 誌からは「史上最高のロック・ライブアルバム」と評されました。評価が高まるにつれて 録音が行われた LEEDS 大学は聖地となり、現在では銘板(Blue Plaque )が掲示されています。当時の日本でのTHE WHO の人気からは想像しにくい出来事です。

この演奏がまさに Classic Rock であり、歴史的名盤という評価がふさわしいアルバムと確信します。