2012年12月10日月曜日

DEEP PURPLE LIVE IN JAPAN ( DEEP PURPLE )




DEEP PURPLE LIVE IN JAPAN / 1972年12月発売



8月15,16日の大阪公演,17日の東京公演を収録した3枚組CD ( 1993年発売 )
                                              



25周年記念 リマスター盤 、MADE IN JAPAN ( 1998年発売 )



ロック史上に残る傑作として名高いライブ・アルバムで 1972年の来日公演が収録されています。後に多くのバンドが同じような日本でのライブ・アルバムを発売していますが 、その先駆けとなったアルバムとしても意義があります。また 2012年の米ローリングストーン誌の読者が選ぶ「歴代最高のライブ・アルバムTOP 10 」で 6 位に選ばれています( 1 位は先に紹介した THE WHO の LIVE AT LEEDS です)。

このアルバムのおかげで日本武道館は「音楽の聖地」として海外にまでその名を知られることになりました。日本盤のジャケットには日本武道館ステージ上部後方から撮られた写真が使われていますが、実際には収録された 7 曲のうち 4 曲が大阪フェスティバルホールにおける演奏が使われているそうです。3 日間の演奏のうち最も演奏状態の良い日のものを使った様です。
当時、日本のレコード会社のライブ・アルバムを作りたいという申し出に対して バンド側は 日本製のレコーディング機材を過小評価していたらしく ライブ録音には乗り気でなかったとされています。ところが 後日、持ち帰った録音テープを聴いたメンバーはその出来のよさに驚愕し、当初 日本限定の発売だったのをレコード会社を説得して世界発売に漕ぎ着けたと 言われています。日本国外では MADE IN JAPAN と改題され ジャケットも変更されて発売されました。

このアルバムが今だに高い評価を受ける理由として  このライブが行われた 1972 年の DEEP PURPLE は「黄金期」と言われるメンバーを擁し、あの名盤と評価される MACHINE HEAD をリリースした直後で最も充実した時期にあったため、メンバーが高いテンションで完璧な演奏を披露できたことが 挙げられます。さらに編集の段階で演奏のミスを修正した痕跡が全く見られないとされていることも 演奏の完璧さを裏付けるものです。
また 先に挙げた様に 当時の最高の録音機器を 使用したために 演奏や観客の反応の細部まで臨場感豊かに鮮明に聴き取れることも理由の1つです。

1曲目のHighway Star は1972年8月16日の大阪での演奏が使われていますが、この日はスタジオ盤をはるかに凌ぐ 鬼気迫る神がかりな演奏で、数多い彼らの演奏の中でも 滅多に聴けない「大阪の奇跡」と言って良い出来かもしれません。全体を通して Ian Gillan のハイトーン・ボーカルや Ritchie Blackmore のギターも素晴らしいのですが、なんといっても このバンドの中心は Jon Lord のハモンドオルガンで その演奏レベルの高さには驚かされます。中でも ギターまがいのオルガンが炸裂する Space Truckin はすばらしく、これを会場で聴いた人は忘れられない思い出となったはずです。

1993 年になって当時の音源をベースとして何と来日 3公演、3日間の演奏を3 枚組の 完全盤CD にして発売するという快挙がなされました。1972年 8 月 15 日、16 日の大阪公演、17 日の日本武道館公演がそれぞれ1 枚の CD となっています。

さらに 1998 年になってリマスターされた結成25 周年記念盤も発売されています。この CD には完全盤にも 収録されていない Lucille が収録されています。この頃の PURPLE は ノっている日のライブでこの曲をよく演奏していたそうです。




・米ローリングストーン誌の読者投票による「歴代最高のライヴ・アルバムTOP10 」    2012              


  1. The Who - 'Live at Leeds'
  2. The Allman Brothers - 'Live at the Filmore East'
  3. Peter Frampton - 'Frampton Comes Alive!'
  4. The Rolling Stones - 'Get Yer Ya-Ya's Out!'
  5. Kiss - 'Alive!'
  6. Deep Purple - 'Made In Japan'
  7. Little Feat - 'Waiting for Columbus'
  8. Nirvana - 'MTV Unplugged in New York'
  9. The Band - 'The Last Waltz'
10. Bob Seger and the Silver Bullet Band - 'Live Bullet'





                       

2012年10月28日日曜日

MACHINE HEAD ( DEEP PURPLE )



MACHINE HEAD ( DEEP PURPLE ) / 1972年3月発売


アナログ盤の内ジャケットに並べられたレコーディング写真





DEEP PURPLE にとって IN ROCK と並ぶ、いやそれ以上の傑作とされるアルバムで 大変まとまった ほぼ完璧と言っても過言でないサウンドで埋めつくされている Classic Rock の歴史的名盤です。個人的にも DEEP PURPLE の最高傑作と思います。当初、このアルバムはスイスのモントルーというジャズ・フェスティバルで有名な街にあったカジノを借り切ってライブに近い方法で録音される予定だったのが 火事で焼けてしまい、止むを得ず滞在ホテルの廊下で録音したという逸話が残っており、アナログ盤の内ジャケットにはその時の写真が並べられています。

全体を通してみると ギター・リフの洪水とも言えるくらいRitchie Blackmore のギターは冴えまくり、これこそClassic Rock の醍醐味と言えるものです。この時期における Jimmy Page と Ritchie Blackmore は 2 大リフ・メーカーと言って良いでしょうし、売れるアルバムはこう作るべきだと共通の考えを持っていたと思います。

しかも、DEEP PURPLE には音響的に厚みのあるのが特徴で これは Jon Lord のdistortion の効いた、そして時にはリズムギターの働きもするハモンドオルガンによる所が大です。さらに 地味だが groove 感のある Roger Glover のベースと シンバル音を極力抑え、中音を強調した Ian Paice のドラムの貢献もあります。

収録曲を個別に聴いてゆくと 冒頭のスピード感のある超有名な曲 Highway Star は誰がなんと言おうと文句なしに素晴らしい曲です。ギターとオルガンが同じリフを弾くところから始まる Maybe I'm A Leo、歪んだ音のハモンドオルガンをバックに美しいギターのメロディーが印象的な Pictures Of Home、R&B風のピアノが特徴でボーカルも美しいNever Before  と捨て曲というものがなく前半を一気に聴いてしまいます。
そしてあまりにも有名な Smoke On The Water です。ギター・リフ人気投票で常に上位にランクされる名曲です。この曲の成り立ちは BS-TBS の Song To Soul でもとりあげられて メンバーが解説しています。それによると DEEP PURPLE の録音に先立ってFRANK ZAPPA&THE MOTHERS OF INVENTION がライブを行っていた所、観客の一人が興奮のあまり、天井に向けて照明弾を打ち込み、そのため 建物が炎上し 全焼して、このせいでレコーディングは中止、延期されてしまいました。レコーディング場所のなくなった彼らは空いていたホテルを使用して なんとかレコーディングを終了することができたのですが、対岸から見たこの時の火災の様子を歌詞にしたのがこの曲だったのです。
この曲は Ritchie の言う通リ、実に「Simple」で効果的なリフから成り立っており、このリフにドラムが続き、さらに何とも言えない絶妙なタイミングで Glover のベースが入ってきます。そしてキーボードが加わり、徐々に厚みを増してゆくイントロは素晴らしく何度聴いても飽きが来ない実に計算しつくされた曲です。また途中のストラトキャスターならではの美しいギター・ソロも素晴らしいです。
次の Lazy は私が気に入っている曲の1つです。少しジャズ・ブルースっぽい曲で Jon Lord の歪んだハモンドオルガンから始まり、ドラムの小気味良いリズムが加わり、そして長いギター・ソロが続き、さらにキーボード・ソロと入れ替わり 高音で Lazy~とシャウトする Gillan のボーカルが組み合わさって実に気持ちが良いのです。この曲と次の曲での小気味良い Ian Paice のドラムとRoger Glover のgroove 感のあるベースは特筆ものです。
そしてアルバムの最後のSpace Truckin' はかなり heavy な曲ですが、印象的なリフの繰り返しに Gillan のボーカルがかぶさっている大ロックンロールです。Gillan のハイトーン・ボーカルはもう楽器の一部と化しています。

スピード感、重厚な音作り、リフの洪水。 これらがこのアルバムの特徴であり、第2期 黄金時代のDEEP PURPLEの特徴でもありました。一曲も退屈な曲がありません。2~3 回聴けば全曲頭の中に焼き付いてしまう曲ばかりです。

このアルバムは Classic Rock の名盤の一枚として自信をもって推薦できます。また その後のミュージシャンからも高い評価を受け、2012 年に METALLICA, IRON MAIDEN, CHICKENFOOT, SANTANA などの現代のトップ・アーティスト達が完全リメイクした RE-MACHINED : TRIBUTE TO DEEP PURPLE'S MACHINE HEAD というアルバムをリリースしています。また このアルバムは2012年7月16日に死去した Jon Lord への追悼盤ともされています。



RE-MACHINED : TRIBUTE TO DEEP PURPLE'S MACHINE HEAD / 2012年9月発売

2012年9月13日木曜日

DEEP PURPLE IN ROCK ( DEEP PURPLE )

DEEP PURPLE IN ROCK ( DEEP PURPLE ) / 1970年6月発売

Classic Rock を語る上で MOUNTAIN や TEN YEARS AFTER を知らなくても LED ZEPPELIN と DEEP PURPLE を知らない人は少ないと思われます。 この 2 つのバンドは何かにつけてよく比較されますが、 両者は原点からして全く異なっており 比較することに意味があるとは思われません。 しかし、両バンド共、リフ主体の音楽を追求し、そして大成功したという共通点があります。
LED ZEPPELIN の音楽の原点は YARDBIRDS から引き継がれたブルースと 英国のトラッド・フォークにあり、それらのルーツ・ミュージックを Jimmy Page が大胆な着想のアレンジと繊細な技術で改造して行ったもので、いわゆるハード・ロックというものでは決してありませんでしたし、彼らもそう主張しています。一方 DEEP PURPLE はクラシック音楽の基礎から教育を受けたキーボードの Jon Lord が中心になって作り上げ、さらにブルース・ロック全盛期にありながらロック・ギターにクラシックギターのフレーズを導入してロックの音楽の幅を大きく押し広げたと言われる Ritchie Blackmore が強力なロックンロールのリフで味付けをして大成功をおさめたバンドでハード・ロックの元祖とされています。LED ZEPPELIN と異なり、はじめからブルース色はほとんど感じられません。

DEEP PURPLE はメンバー・チェンジが多く行われ、これが本国において LED ZEPPELIN に人気の面で水をあけられた原因の一つと思われます。名盤が登場したのはボーカルの Ian Gillan が在籍した第2期と David Coverdale (現 WHITESNAKE ) が在籍した第3期です。ここではアルバム「DEEP PURPLE IN ROCK」「MACHINE HEAD」 「BURN」「LIVE IN JAPAN」を紹介したいと思います。

DEEP PURPLE は1968年に結成されましたが、初期の頃はキーボードのJon Lord が中心となって音作りを行っており、クラシックの影響が強く、発表した3枚のアルバムは評価はされたものの 売り上げは全く芳しくありませんでした。ところが同じ頃、同国からデビューした LED ZEPPELIN が本国およびアメリカで大成功をおさめ着々とその地位を築きつつあり、それを目の当たりにしたギターの Ritchie Blackmore が 強力なギター・リフとロックンロールのビートによるハード・ロック路線を歩むことの正しさを確信し、それまでJon Lord が持っていた音楽の主導権を握り、さらにボーカルを LED ZEPPELIN の Robert Plant の様に ハイ・トーンの出せる Ian Gillan に交代させ、ハード・ロック色の強いアルバムとして作りあげたのが、名盤「DEEP PURPLE IN ROCK」でした。

このアルバムに限らず ほかのアルバムでも DEEP PURPLE に特徴的なのはキーボードとギターの見事な掛け合いによる共生です。これほどキーボードがギターと対等に張り合える事のできるバンドは他にはなかなか見当たりません。Jon Lord のハモンド・オルガンの特徴は Marshall アンプを使用することによりギターに負けない distortion の効いた迫力のある音を作り出していることで、後のロック・キーボードの教科書的存在となりました。また 音楽的にはクラシックだけでなく Jimmy Smith に強く影響を受けたとされるジャズ的アプローチも彼の特徴です。また このアルバムから加わった Roger Glover の Rickenbacker ベース のメタルっぽい音もその後の DEEP PURPLE の音作りに大きな影響を与えたと言えるでしょう。

このアルバムは全曲が強力なギター・リフを持ったハード・ロックで すべてが聴いていて心地よくなります。LED ZEPPELIN の持つブルース的な重厚さではなく、スピード感のあるハードな曲が多いのが彼らの特徴です。

第1曲目は静かな教会に鳴り響くようなオルガン、そしてギターと同じリフを弾くGlover のベース、さらに強烈な爆音の Ritchie のギター、耳に残るハイ・トーンの Gillan のボーカルが特徴の名曲「Speed King」 です。この曲の間奏での Jon Lord のジャズ風のハモンド・オルガンとRitchie Blackmoreのギターの掛け合いは見事です。

アルバム中 最も印象に残るのは「Child In Time 」です。キーボードと Gillan のボーカルで静かに始まり徐々に盛り上がっていき、やがてギターが加わり頂点に達します。中盤でのギターソロは圧巻で、それが終わるとまた キーボードとボーカルの静寂の世界に戻ります。この曲ではGillan のハイ・トーンのボーカルが素晴らしく、静けさと爆音の共存が素晴らしい効果を出しています。

他の 「Bloodsucker」 「Flight Of The Rat」「Into The Fire」 なども ハード・ロックとして良い出来です。

このアルバムには収録されていませんが(1996 年発売の25周年記念盤には収録されている)、同時期にシングル盤として発売された Black Night は日本でも大ヒットし、 ギター・リフの人気投票で常に上位にランクされる名曲です。

発売後40年以上たっても 聴く人をワクワクさせてくれるアルバムというのは本当の名盤と言ってよいでしょう。

2012年8月6日月曜日

THE KIDS ARE ALRIGHT ( THE WHO )


THE KIDS ARE ALRIGHT ( THE WHO ) / 1990年10月発売(CD)
                                                                         2003年9月発売(DVD)



THE KIDS ARE ALRIGHT は Keith Moon 死亡直前までの THE WHO の足跡を追ったドキュメンタリー映画です。THE WHO というバンドを知るには この映画を観るのが最も良いと思われます。それくらいTHE WHO の魅力が満載されています。
さらにCD の方は彼らの代表曲がほとんど収録されているので ライブのベスト盤としてもよいでしょう。

THE WHO の初期の音楽の根底にあったものはモッズ文化で 後にそれを見事に表現したものが彼らの傑作の1つである QUADROPHENIA でした。さらに彼らの音楽は終始 反逆精神と破壊的パワーに満ちていました。1970 年代後半になり、パンクが台頭してくるとそれまでのロックグループはことごとく否定されて行ったにもかかわらず、THE WHO は一貫してロックの初期衝動である「反逆」「破壊」を繰り返したことが パンク・ロッカー達の共感を呼び 教祖とまで崇められました。この歴史は映画を見終わるとよく理解できます。






     Pete Townshend には有名なギター・リフも派手なギター・ソロもあまりありません。
しかし彼のギターには惹かれてしまいます。ロック・ギターはこうあるべきという
     手本です。最も派手なステージ・アクション、最もパワフルなリズム・ギタリストです



これだけの跳躍力があれば別の分野でも成功していたでしょう。CGではありません


         

THE WHO は楽器を破壊することでステージ上で「破壊」を表現しました



The Ox こと John Entwistle の skeleton suit


モッズ文化そしてアルバムQUADROPHENIAを理解するにはこの映画が必見



2012年8月3日金曜日

LIVE AT THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970 ( THE WHO )


LIVE AT THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970 / 1996年10月発売


1970 年の第 3 回ワイト島フェスティバルでの ライブアルバムで THE WHO 解散後の 1996 年に発売されました。ライブアルバムとしての音質は文句なく先の LIVE AT LEEDS の方が上ですが、LIVE AT LEEDS が 大学の講堂に少人数を集めたライブだったのに比べて ワイト島フェスティバルは動員数がなんと過去最高の 60 万人という世界最大の音楽祭です。音の広がりと観客の反応からその規模が伝わってきて こちらのアルバムの方がライブの雰囲気をよく感じ取ることができます。何といってもあの Jimi Hendrix も出演しているということで彼らの張り切り様は 尋常ではありません( Jimi Hendrix はこのフェスティバルの直後に死去)。このライブでもアルバム TOMMY をほぼ全曲演奏しています。

DVD も発売されていますので是非見ていただきたいと思います。彼らの出演は2:30 AM からというのに1 曲目のHeaven And Hell からすごい盛り上がりです。白のツナギに赤のソックスを履いて Gibson SG を振り回す Pete Townshend はかっこいいですね。それにしてもこの全盛期の頃、なぜ来日しなかったということが謎です。


THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970 での THE WHO







2012年7月19日木曜日

QUADROPHENIA・四重人格 ( THE WHO )


QUADROPHENIA ( THE WHO ) / 1973年10月発売


QUADROPHENIA ( 四重人格 ) は THE WHO の 6 作目にあたるアルバムです。THE WHO が活躍し始めた 1965 年のイギリスを舞台にし、Jimmy というモッズ少年(モッズ、Mods とはイギリスの若い労働者のロンドン近辺で 1950 年代後半から 1960 年代中頃にかけて流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイル、およびその支持者を指す)の物語を描いたコンセプト・アルバムになっています。Jimmy は多重人格者であり、この少年の心の葛藤を軸に 四つの人格に THE WHO の四人を反映させて アルバムが展開していきます。本作品を基にした映画「さらば青春の光」が 1979 年に公開され、モッズ・リバイバル・ブームをひきおこしています。

Pete Townshend はかつて「 TOMMY 」「 WHO'S NEXT 」「 QUADROPHENIA 」がTHE WHO の傑作だったと述べています。

このアルバムの中で THE WHO のメンバー4 人がそれぞれ歌の中で担当している 4 つの性格は歌詞の中に表現されているはずなのですが、このアルバムで展開されている話は高度の文学的内容らしく、訳詩を読んでも 私にはさっぱり理解できず、真の内容を理解するためには 高度の英語力が必要と思われます。

このアルバムは全 17 曲からなるのですが 歌詞の深い意味を理解できなくても ロックアルバムとして 全く退屈しない曲作りがされています。
海の音から始まる 1曲目に続く 2曲目の The Real Me を聞いた途端、ぶっ飛んでしまいます。リード・ベースといわれる表現がぴったりのJohn Entwistle のベースが踊りまくり、曲の主役となって Roger のボーカルと絡み合い 素晴らしいノリなのです。ベースというのはこういう弾き方もあるのだと感心させられてしまいます。この曲の中では Pete のギターは完全に脇役にまわっていますが、カッティングは正確なリズムを刻み、実に効果的です。この曲だけでもこのアルバムの存在価値はあります。
続く Quadrophenia は美しいギターとシンセサイザーの使い方が素晴らしい曲、そして おなじみの名曲 Cut My Hair 、「僕は一人」と Pete が歌う I'm One、Roger の歌とホルンを使用したメロディーが印象的な Helpless Dancer、穏やかなピアノラインから始まり THE WHO の代表曲としてライブでも必ず取り上げられる 5:15、そして Roger のボーカル、Keith のドラムが爆発し、ベースが再び踊りまくる Doctor Jimmy、この曲では特にシンセサイザーが効果的に使われています。
最後の Love Reign O'er Me は Roger のボーカルが圧倒的で 最大の見せ場をつくり、アルバムの最後を飾るにふさわしい曲と思われます。

全曲 Pete Townshend の作曲ですが、コンセプト・アルバムとして作られただけあって、非常に細部まで練られており、何度も聴くうちに THE WHO の凄さがわかってくるアルバムです。このアルバムを通して感じるのは後で映画で使われることを意識してか 効果音をうまく挿入してあり、さらにシンセサイザーをうまく使用して 4人のロック・グループでは表現できないような壮大なスケールの曲作りをしたということです。
このアルバムが日本では最近まで廃盤になっていたということは信じられないことであり、いかに日本で彼らが過小評価されてきたかを示す事実です。

2012年7月5日木曜日

LIVE AT LEEDS ( THE WHO )



 LIVE AT LEEDS (THE WHO ) / 1970年5月発売(オリジナル盤)
                                              写真は DELUXE Edition ( 2001年 )
                                   





このアルバムを記念してLEEDS大学に掲示してあるBlue Plaque



THE WHO は ライブ・バンドとして有名でしたが、不思議なことに 1983 年の Pete Townshend による解散宣言に至るまでに 公式に発売されたライブ・アルバムは この「 LIVE AT LEEDS 」のみです。

オリジナル盤が発売されたのが TOMMY の発売の翌年の 1970 年でしたが、収録曲は 6 曲で 後の発売 25 周年を記念した「25周年 edition 」では 15 曲に収録曲が増えていますが、いずれの盤にも TOMMYからの曲は収録されておらず、自分たちは TOMMY が全てではないという Pete Townshend の主張が感じられたものでした。そのためか これらの盤はすさまじいハード・ロックアルバムとなっています。
かつて Pete Townshend は 「THE WHO のリード楽器は ドラムとベースで ギターがリズム楽器なんだ」と語っていましたが、Keith Moon のドラム そして John Entwistle のベースの凄まじいことは 実際に聴いてみないと 言葉では表現できないくらいです。80 年代以降のハード・ロックグループでこのくらいエネルギーが有り余った 躍動感のあるロックを聴かせてくれるグループは皆無と言っても良いのではないでしょうか。

2001 年になって「DELUXE Edition 」が発売されましたが、このアルバムは前2 盤の収録曲に加えて なんと アルバム TOMMY の大筋( 4 曲を除く )が ライブで再現されているというものでした。当初の Pete の意図に反して 後から付け加えられたものと思われますが、あの複雑な展開のTOMMY をライブで聴けるということは素晴らしいことです。後になってLIVE AT THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970 というアルバムが発売され、 この中でもTOMMYのほぼ全曲を聴くことができますが、この時の演奏よりもLIVE AT LEEDS での演奏の方が迫力があり、良い出来と思われます。

これらすべての曲が 1ステージの内容だと考えると 凄まじいパワーが感じられ、彼らの演奏能力がいかにすごかったかが推測されます。

このアルバムが録音された時期がバンドの全盛期であったことや、1969 年のアルバム TOMMY の国際的な成功等の要因も伴って、NEWYORK TIMES 誌からは「史上最高のロック・ライブアルバム」と評されました。評価が高まるにつれて 録音が行われた LEEDS 大学は聖地となり、現在では銘板(Blue Plaque )が掲示されています。当時の日本でのTHE WHO の人気からは想像しにくい出来事です。

この演奏がまさに Classic Rock であり、歴史的名盤という評価がふさわしいアルバムと確信します。

2012年6月10日日曜日

WHO'S NEXT ( THE WHO )

WHO'S NEXT ( THE WHO ) / 1971年8 月発売



このアルバムは THE WHO の 5 作めに あたりますが、「TOMMY」の発売後 2年目の 1971年に発売され 70 年代ロックアルバムの名盤の一つに数えられています。もともとは 映画用アルバムとして制作される予定だったものが実現しなかったので 「WHO'S NEXT」という題名で 発売されたものです。TOMMYの成功に続き この名盤で THE WHO の人気は決定的となり 欧米(日本では?)では LED ZEPPELIN と並び称されるバンドとなったのでした。
このアルバムでは シンセサイザーを導入した新たな一面も見られますが(この時代ではすでにシンセサイザーを使うことはめずらしいことではない)、アルバムとしての完成度が極めて高く、 Pete Townshend もベストに挙げるほどです。

このアルバムを一度も聴いたことのない人は まず最後の曲の Won't Get Fooled Again を聴いていただきたい。この曲は Classic Rock の名曲の一つで 印象に残るシンセサイザーのイントロで始まり、Pete 得意のカッティング・ギターのロックサウンドとなり、さらに 超人的テクニックのベースとドラムが絡んできて 8分半という長さを感じさせない構成となっています。この曲は後に VAN HALEN や KISS という有名バンドもカバーしているくらいで Rock の古典と言っても良い曲です。

このアルバムは 4曲目の My Wife が John Entwistle の作曲である以外はすべて Pete Townshend の作曲によるもので アルバムの評価同様、彼の作曲能力も 高く評価されました。

1曲目の名曲 Baba O'Riley から始まり、Entwistle のベースが美しい Bargain, Nikki Hopkins のピアノが聴ける The Song Is Over, そして 名バラード Behind Blue Eyes となりますが、 この曲は THE WHO のバラードの中では最も有名な曲で アコースティック・ギターで静かに始まり 素晴らしいコーラスが加わり、そして後半にはハードなロックサウンドに突入するという構成で LED ZEPPELIN の Stairway To Heaven と同様 静と動のコントラストが特徴的な曲です。

総合するとこのアルバムは 1曲1曲の出来、作品全体の流れを考えると「完璧」と言っても過言ではないでしょう。 しかし Pete Townshend の歌詞は難解で よく意味のわからない部分が 多く見られます。

Classic Rock ファンのみならず、Rock ファンは必聴の1枚です。現在のアーティスト達が これに匹敵するようなアルバムを作るのはもう無理なのでしょうか。



THE WHO のドキュメンタリー映画 KIDS ARE ALRIGHTでの 有名な Won't Get Fooled Again の演奏シーン



2012年5月8日火曜日

TOMMY ( THE WHO )


TOMMY ( THE WHO ) / 1969年5月発売

ロックオペラ「TOMMY」は THE WHO の 4 枚目のアルバムです。このアルバムはTHE WHO のキャリアの中で最も重要な位置を占め、彼らは「クラッシクの楽曲技法をロックに取り入れ、ロックオペラという新たな分野を切り開いた偉大なバンド」という評価を受けました。ロックオペラとは1 曲目から最後の曲までが 1つの物語に従って特徴付けられている構成が取られているものです。THE BEATLES が 1966 年にアルバムSGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND を出してコンセプト・アルバムというものを提示しましたが、TOMMY はさらにそれを一歩進めたものと思われます。

このアルバムによって THE WHO は大成功をおさめましたが、1969 年の Woodstock Festival ではほぼ全曲演奏され、その様子は映像作品でも見ることができます。
この作品は 視覚・聴覚・発語障害という三重苦の少年 Tommy の孤独や苦悩を音楽で表現した物ですが、後にオーケストラとの共演、映画、ブロードウェイ・ミュージカル化と何度も発表され、彼らのロック史における地位を不動のものにしました。このTOMMY というアルバムは どの1曲がすばらしいと評価できるものではなく、物語を知った上で聴くと 話の進行に従って音楽がよく特徴付けられていると共にどの曲も感動的ですばらしいことがわかります。

THE WHO は 1964年に活動を開始しています。しかし 日本において彼らほど過小評価されたバンドも他にはなかったと言ってよいくらいで 初来日は何と 2004年のTHE ROCK ODYSSEY、単独来日は 2008年でした。

他の3人とは対照的にステージ上でほとんど動かなかったので
The Ox 」と呼ばれたベースの John Entwistle

               
THE WHO はステージでギターを叩き壊し、ドラムセットを破壊する暴力的なパフォーマンスで有名なライブ・バンドとして知られる一方で、文学的な歌詞をもつ TOMMY などの作品とのギャップが魅力の一つでした。演奏は初期から大音量で行われていたと言われています。60年代前半 ロック・ミュージックが大衆化し、大会場でコンサートが行われるようになると ミュージシャンからアンプの大音量化、大型化の要求が強まりました。ギターアンプで有名な Marshall アンプの開発においては THE WHO のギタリストである Pete Townshend が強く関わっていたそうです。彼は 最初 直径 30 cm のスピーカーを 8 個入れたキャビネットの制作を提案したそうですが、大きすぎるため Marshall 社は 30 cm スピーカーを 4 個入れたキャビネットを2 台重ねて使うことを発案し これが現在の Marshall アンプの原型となったと言われています。皮肉なことに この大音量のため Pete Townshend は現在まで難聴に苦しめられているそうです。

オリジナル曲の多いバンドですが、ほとんどの曲は Pete Townshend の作詞・作曲によるものです。ギタリストとしての Pete はステージで縦横無尽に飛び跳ね、腕を振り回してコードを弾くウインドミル奏法で有名です。この時代のギターは 派手なギター・リフとライブでのimprovizasion(即興演奏) を主体としたギター・ソロが特徴ですが、彼のギターはコード・カッティングが主体の演奏で 独自のスタイルを確立しました。パワー・コードは現在のロックでもよく使われる奏法ですが これを考えついたのは Pete Townshend といわれています。また Jimi Hendrix や Jeff Beck が得意とする feed back 奏法も実は彼が始めたという説があります(Ritchie Blackmore の話)。

Roger Daltrey のボーカルは 楽器の大音量に押され気味で LED ZEPPELIN の Robert Plant と比べられると当然のことながら弱く感じられてしまいますが、TOMMY の頃には 派手なアクションと共に楽器に負けない唱法を獲得し、THE WHO のボーカリストとしての評価を確立しています。その後 現在に至るまで THE WHO の楽曲を彼なりに解釈してうまく歌いこなしています。2008年の来日公演のbootleg を聴く機会がありましたが、昔の曲を key を変えることなく歌っています。

一流のロック・バンドになるためには 一流のリズム隊(ベース、ドラム)を持っていることが必須と言われますが、THE WHO の場合 リズム隊は超一流でした。
ベースの John Entwistle は THE BEATLES の Paul McCartney, CREAM の Jack Bruce, LED ZEPPELIN の John Paul Jones と共に近代ロック・ベースの創始者の一人で、同世代および後のベーシスト達に大きな影響を与えたとされています。彼のベース・プレイは 単なるリズムだけでなく時にはメロディーを奏でる高度なテクニックで「リード・ベース」とも称されています。彼はステージ上では静かに立って、Townshend や Daltrey のように大きく動かなかったことから「The Ox」の愛称で呼ばれたことがありました。
ドラマーの Keith Moon もロック史上 屈指の名ドラマーと評価されています。ロック界に初めてダブル・バスドラムを持ち込んだ CREAM の Ginger Baker と共に ダブル・バスドラムの使い手として有名です。LED ZEPPELIN の John Bonham の様な破壊力はないものの フィルインの連続とも言える打数の多い彼のドラムは他に類を見ず、後進の数多くのドラマーに多大な影響を与えたとされています。また 私生活においては変人と言われるくらい数多くの奇行も知られています。しかし 自由奔放な生活がたたってか、1978年9 月にアルコール依存症治療のための薬物の過剰摂取で急死してしまいました。この時をもってオリジナル・メンバーでの THE WHO は解散してしまったのです。その後サポート・メンバーを加えて活動していましたが 2002年にはベースの John Entwistle も死去して 初来日した時の オリジナルメンバーは Roger Daltrey と Pete Townshend だけでした。1978年までになぜ来日できなかったのかが なぞであり、悔やまれる所です。 2012年に TOMMY の公演のために単独来日した Roger Daltrey もこのことに触れていました。

2012年3月29日木曜日

UNDEAD ( TEN YEARS AFTER )

UNDEAD ( TEN YEARS AFTER ) / 1968年8月発売


このアルバムは TEN YEARS AFTER の 2 枚目のアルバムにあたりますが、セカンド・アルバムに いきなりライブ・アルバムを出してくることは大変珍しいことで 彼らが いかに自分達の演奏に自信を持っていたかということの表れと思われます。

このアルバムは 1968 年5 月に Klooks Kleek という London の小さなジャズクラブで録音されたものです。会場が小さいだけあって そばで彼らの演奏を聴いているかのような感じのする録音となっています。このアルバムで彼らは1950 年代のジャズやブルースと初期のロックンロールの合わさった古びたスタイルの熱気ある演奏を聴かせてくれます。60 年代にリリースされたロックのライブ・アルバムでは最高と言える1枚と思います。

このアルバムの一番の目玉は1969年の Woodstock Festival での熱演で有名になった「I'm Going Home」のオリジナルと言える演奏が聴けることです。Alvin Lee の早弾きのギターばかりが取りざたされますが、バックのベースやオルガンも熱い演奏をしています。この曲はこのアルバムでの演奏が最高と思います。
そして続いての圧巻は「I May Be Wrong, But I Won't Be Wrong Always」です。この曲はジャズ風のjam ですが、この曲でのAlvin Lee は鬼気迫ると表現してよいくらいの早弾きとテクニックのあるギターを聴かせてくれます。

CREAM の演奏で有名な Spoonful や Standing At The Crossroad ですが、 このアルバムでの彼らのジャズ風のアレンジもなかなか良いものです。

このアルバムは TEN YEARS AFTER を初めて聴くという人にはやや難解な曲が多く、はじめは馴染めないかもしれません。Ssssh あたりから聴いていただくのが無難でしょう。

2012年3月27日火曜日

PURE BLUES ( ALVIN LEE & TEN YEARS AFTER )

PURE BLUES ( ALVIN LEE & TEN YEARS AFTER ) / 1995年9月発売




1995年発売のアルバムで アルバムタイトルどうり TEN YEARS AFTER 時代から解散後のソロ時代の Blues に根ざした曲ばかりを選んだアルバムです。スローな Blues 中心の落ち着いた曲が多くなっています。もともと TEN YEARS AFTER は Alvin Lee 中心のグループで Blues 系の曲が多かったので Lee のベスト盤に近い編集と言っても良いでしょう。

このアルバムを聴き終わってみると Alvin Leeのギターには色々な評価があるかもしれませんが、早弾きのセンスはやはり大したものだと思われます。また 彼のギターは同じ Blues をやっている Gary Moore や Joe Bonamassa のギターに比べると やや音が古くさく感じられますが 自然な音で、それがかえって Blues 臭さを うまく出しているような気がします。これはおそらく彼がES-335 というセミ・アコースティックギターを使い続けているからでしょう。

Alvin Lee は George Harrison とも親交が深く、このアルバムの中でGeorge  Harrison が スライド・ギター を弾いている The Bluest Blues, Real Life Blues, Talk Don't Bother Me などは あまり知られていないのですが良い曲です。

しかし このアルバムだけでは TEN YEARS AFTER を理解するには不十分で、少なくとも先に紹介した 2 枚のアルバムを聴いたあとで 聴いていただきたいと思います。

2012年3月25日日曜日

LIVE AT THE FILLMORE EAST ( TEN YEARS AFTER )


LIVE AT THE FILLMORE EAST ( TEN YEARS AFTER ) / 2001年6月発売


TEN YEARS AFTER は 1974年の解散までにライブ・アルバムを含めて 8枚のアルバムを出しています。最も出来の良いスタジオ録音アルバムは先の Ssssh. と思いますが、他のアルバムが悪いわけではありません。しかし Blues への強い傾倒のためか、一曲一曲はすばらしいのですが、アルバムとして聴くと曲調がすべて似ていて 1つのアルバムで印象に残る曲が 1 ~2 曲しかないのです。

60 年代後半から70 年代前半にかけての ロックバンドは何と言ってもライブ演奏がすべてで、 神がかりなギターテクニックとオリジナルのギター・リフを持ったギタリストがバンドの中心となり、 聴衆はスタジオ録音では聴けない improvisation (即興演奏)の世界に酔いしれたものでした。Woodstock Festival での演奏や このアルバムを聴くと やはり TEN YEARS AFTER はライブバンドだということが確信されます。

このアルバムは 1969年8月の Woodstock Festival から 6ヵ月後の 1970年2月のFILLMORE EAST で行われた彼らのライブを素晴らしい音質で収録したアルバムですが、31年も経った 2001年に発売されました。伝説の熱演から時間があまり経ってないこともあり、変わらない演奏を聴くことができます。このアルバムは TEN YEARS AFTER の初期の名曲がほぼ収録されていますが、彼らの中期以降の楽曲がやや単調で、バンドが迷走状態となり 初期の勢いを失ったことを考えると 彼らが最高のコンディションにあった時の演奏で彼らのベスト盤と考えてよいでしょう。Love Like A Man, Good Morning Little Schoolgirl, I'm Going Home, I Woke Up This Morning など TEN YEARS AFTER のファンなら聴きたい曲はすべて収録されていると思います。また CREAM で有名な Blues の名曲 Spoonful も収録されていますが アレンジを比べてみるとCREAM よりもかなりBlues 色が強く感じられます。

このアルバムではAlvin Lee のボーカルは いつもながら、いまひとつですが、ギターはさすがに早弾きの先駆者と言われるだけあって素晴らしく、全篇を通して ES-335 を最高のパワーで思い切り弾きまくっています。新しい発見は バックのオルガン、ベース、ドラムが結構うまくまとまっており、ギターを盛り上げていることです。特にベースの Leo Lyons が素晴らしい仕事をしています。Woodstock でひたすら狂ったように頭を振り続けてベースを弾いていた男です。最近知ったのですが、Leo Lyons という人は 孤高の大名人といわれた Michael Schenker がいた UFO の有名なアルバムである「PHENOMENON-現象」のproducer だったのです。

LIVE AT THE FILLMORE EAST は TEN YEARS AFTER の絶頂期のライブです。 FILLMORE EAST と言えばいろいろなアーティストがライブを行い 名盤を残していますが このアルバムも間違いなく その1つです。

2012年3月22日木曜日

Ssssh ( TEN YEARS AFTER)





Ssssh ( TEN YEARS AFTER ) / 1969年8月発売




最近の Alvin Lee と GIBSON ES-335



SANTANA と同様に 1969 年の Woodstock Festival での熱演で人気を確固たるものにしたのが TEN YEARS AFTER でした。映画 Woodstock での10 分にも及ぶ「 I'm Going Home 」の Alvin Lee の般若面でのシャウトや縦横無尽のギタープレイは当時の語り草で これからも忘れられることのないシーンでしょう。

TEN YEARS AFTER は1965 年に結成され、ブルースをベースにしてジャズやリズム・アンド・ブルースなど多様なハード・ロックの原型とも言える楽曲をプレイしていました。このバンドの一番の売りは Alvin Lee のギターで 彼のギターは当時としてはおそろしく早弾きで「早弾き西洋一」と言われ、そのフィンガリングは「マシンガン・ピッキング」の異名をとっていました。
彼の愛用のギターは GIBSON ES-335 と言われるセミ・アコースティックギターでした。ES-335 の愛用者といえば Chuck Berry や B.B King が有名です。Alvin Lee はエフェクターは使わずにES-335 と Marshall Amp を直結し、Amp で歪ませてあの音を出していた様です。

10 年続くグループであるようにとの願いで作られた TEN YEARS AFTER でしたが、1974 年に解散したので願いは実現しませんでした。彼らの音楽は Muddy Waters や T-Bone Walker の様な本物のブルースに近い曲が多かったためか 一般の受けが悪く、Leeの早弾きに惹かれた人達も時代と共に離れてゆき、70年以降LED ZEPPELIN の様なブルースの影響はうけたものの、大衆受けするギター・リフとメロディアスな早弾きを売り物にするグループが たくさん台頭してきたため あまり評価されなくなり、忘れ去られてしまったのかもしれません。さらに Woodstock での熱演があまりもすごかったため それを超えるものを常に求められた結果、バンドとしての音楽活動が行き詰ってしまったとも考えられます。
しかし解散後も 時折再編して 80 年代から90 年代にかけて演奏活動を行なって来た模様です。最近は Alvin Lee 抜きで 新しいギタリストを入れて 新成 TEN YEARS AFTER として演奏活動を行なっています。

ここに紹介する Ssssh というアルバムは彼らの 4 作目のアルバムでロック名盤選には必ず選ばれるくらい定番化された傑作です。
「アクロバティックな早弾きだけ」などと陰口をたたかれる Alvin Lee ですが、このアルバムを聴いていると決してそんなことはないと確信します。派手なギター・リフは少ないですが「Good Morning Little Schoolgirl 」などでの彼の技量は大したものと思われます。バックのオルガン、ベース、ドラムの一体感も素晴らしく感じられます。
さらに 一度聴いたら忘れられない彼らの傑作の1曲が 最後の「 I Woke Up This Morning ― 夜明けのない朝 」です。この曲は私が TEN YEARS AFTER の曲の中で Love Like A Man と共に最も好きな曲ですが、1969 年に発表された曲ということで それ以降のブルース・ロックの新時代を切り開いた曲と評価してよいでしょう。

このアルバムは ブルース・ロック好きの人は必携の名盤と思われます。

2012年3月18日日曜日

SANTANA BROTHERS ( CARLOS, JORGE & HERNANDEZ SANTANA )



SANTANA BROTHERS / 1994年9月発売

SANTANA も MILAGRO で終わりにしようと思っていましたが、もう1作どうしても取り上げておきたいアルバムが残っていました。

この SANTANA BROTHERS は MILAGRO から2年後に発売されたアルバムで
BLUES FOR SALVADOR と同様、バンドとしての SANTANA とは別の Carlos Santana 個人のアルバムです。弟の Jorge、 甥の Hernandez との共作です。音楽的には MILAGRO の延長と考えてよい内容ですが、ボーカルなしのギタープレイのみのアルバムとなっています。日本ではあまりなじみのないアルバムですが、聴いてみると全曲素晴らしい、隠れた名盤と言ってよいかもしれません。

クレジットによると Carlos Santana が 単独でソロをとっているのは 3.Luz Amor y Vida と 6.Blues Latino のみとなっていますが、他の曲でも誰が弾いているのかよくわかりません。しかし Carlos Santana の Paul Reed Smith というギターは ちょっとこもったような甘い音が特徴なので なんとなくわかる部分があります。

4.En Aranjuez Con Tu Amor (アランフェス交響曲) はこのアルバムの圧巻で バンドとしての SANTANA のアルバムには まず収録されない曲でしょう。 5.Contigo は いかにも Carlos Santana らしい素晴らしい曲です。

このアルバムは かなり SANTANA を聴き込んでいる人しか知らないアルバムですが 3人のギタリストがのびのびとプレイしており、是非聴いていただきたいアルバムです。しかし、現在では 入手困難な様です。

2012年1月12日木曜日

MILAGRO ( SANTANA )




MILAGRO(SANTANA) / 1992年5月発売

                                
ジャケット裏面の Bill Graham と Miles Davis の写真 

  
SANTANA で どうしても最後に紹介しておかなければならないアルバムが このMILAGRO です。MILAGRO とはスペイン語で「奇跡」とか「神業」とかいう意味で タイトルどうり、C. Santana のギターは 久しぶりに激しく、パーカッションもすごい迫力で迫ってきます。

先に紹介した ZEBOP! (1981) 以降、SHANGO (1982), BEYOND APPEARANCES (1985), FREEDOM (1987), SPIRITS DANCING IN THE FLESH (1990) までバンドとしてのSANTANA は Pop 路線を走ることになり、ヒット作はあったものの音楽的に評価されたアルバムはありませんでした。
実際、このPop 路線、 C.Santana 個人としては 本当にやりたかった音楽ではなく レコード会社の売上枚数を増やすという意向に従っただけのようでした。これらのアルバムと並行して Carlos Santana 名義で Jazz, Fusion 色の強いアルバムをリリースしたのが 本当にやりたかったことのようです。それは WEATHER REPORT の Wayne Shorter との共演作であるTHE SWING OF DELIGHT (1980), HAVANA MOON (1983), そして先に紹介した BLUES FOR SALVADOR (1987) などです。

その様なバンド名義と個人名義の分裂が 1990 年まで続いた後、初期のスタイルに近いタイプの演奏に戻り、1992年に発売されたのが この MILAGRO でした。
このアルバムは 1991年に相次いで亡くなった Bill Graham ( SANTANA を見出して売り出した伝説のプロモーター ) と Miles Davis への追悼盤と言えるものです。C. Santana は Jazz 界の帝王と言われる Miles Davis を大変敬愛しており、共演もしていますが、CARAVANSERAI (1972) 以降のアルバムにおいて Miles から音作りに大きな影響をうけていると言われています。

アルバム全体の特徴として挙げられるのは、ラテンの熱気と強烈なリズムが戻ったものの サウンドが初期の SANTANA の特徴である泥臭いラテンサウンド(私はこちらのほうが好みだが)から都会的な Fusion 色の強いサウンドに変化したことと、ギターが YAMAHA から全曲 Paul Reed Smith (PRS) に代わったことにより やわらかく艷やかな音になったことです。

1.MILAGRO ; タイトル曲ですが、初めの MC は 1986 年の Bill Graham の声です。初期の頃の熱気がいきなり戻ってきたと感じさせる曲です。2. SOMEWHERE IN HEAVEN ; Luther King 牧師の演説からはじまるバラードですが、ソロギター、ボーカル共に素晴らしい曲で必聴です。3. SAJA/RIGHT ON ; SANTANA らしい曲、パーカッションとギターの絡み合いがすばらしい。ボーカルも良し。7. AGUA QUE VA CAER ; 歌詞がさっぱりわからないが、初期のアルバムに出てくるような強烈なラテンパーカッションが特徴の曲でギターもすばらしい。私のお気に入りの曲。8. MAKE SOMEBODY HAPPY ; これもすばらしいバラードですが、途中から入ってくるギターの音がとろけるようで なんとも言えない雰意気を創り出しています。10. GYPSY/GRAJONCA ; これもなかなかすばらしい曲。C. Santana のギターもよく泣いています。

全体を通して聴いてみると すばらしいアルバムです。後期の最高傑作として良いかもしれません。この後 復活作が続くと思われたのですが、1999年の SUPERNATURAL までは沈黙が続きます。有名アーティストとの共演でヒット曲満載であった SUPERNATURAL のグラミー賞独占を不可思議に思っている人々も このアルバムは認めるでしょう。しかし セールス上はあまり成功とは言えませんでした。