2010年12月16日木曜日

PRESENCE (LED ZEPPELIN)



PRESENCE (LED ZEPPELIN) / 1976年2月24日発売(英)


 1976年と言えば パンクロックが流行し始めた頃で 古いスタイルのままのロックでは もう受け入れられなくなりかけて来た時代でした。LED ZEPPELIN も 前2作 House of The Holy, Physical Graffiti で 時代の流れと共に 自らも変わって行こうとしていたかの様に見えました。ところがこのアルバム PRESENCE では意外にも初期のスタイルに戻り、迷いが吹っ切れてしまったようです。

具体的には ジョン・ポール・ジョーンズによるシンセサイザーなどのキーボードでのオーケストレーションの類が全くないこと、アコースティックギターによって構成される曲が全くなくなったことです。なぜ、急にこのような方向転換が行われたかは わかりませんが、初期のZEP のアルバムにみられるブルースを主体とした緊張感のある攻撃的なロックに戻ったといってよいでしょう。アルバムの出来としては Ⅱと同等に評価したいと思います。

1曲目の Achilles Last Stand はZEP のスタジオ録音としては 10分を超える最も長大な曲です。この曲は ZEP 史上、Stairway to Heaven と同等の評価を受けている名曲です。ZEP がデビューした頃、ZEPの リハーサルを遠くで聴いていた他のグループのメンバーが 「あのグループにはドラマーが2人いるのか」 と言ったという話が残っています。この曲でのボンゾのドラムは まさに この話どうりの 圧倒的迫力で 中心的役割を果たしています。一方、この時期の ジミーペイジは ヘロイン中毒が進み、コンサートでは あまり難しい曲を演奏しなくなったばかりか、演奏上のミスも多いことは、bootleg でも指摘されていますが、この曲では 完全復活とも思わせるテンションの高さです。Stairway to Heaven の様に静かに始まるのではなく、ボンゾのドラムの一撃を合図に ほとんど緩徐な部分なしにパワフルな演奏が最後まで続きます。よく注意して聴いてみると分かりますが、この曲のギターパートは何重にもダビングが繰り返してあり この曲を雄大な感じにするのに貢献しています。調べた所では 1ダースに余るダビングを一晩でやり遂げたそうです。2003年に発売されたDVDには 1979年のKnebworth Festival での Achilles Last Stand の演奏が収録されていますが、このオーバーダビングされたギターの曲を ジミーペイジは ギブソン・レスポール1本ですばらしく演奏しており、彼のアレンジャーとしての才能は 並ではないと思われました。

Achilles Last Stand のインパクトがあまりにも強すぎて、後の曲の印象が薄くなってしまいそうですが、2曲目の For Your Life は2007年の再結成コンサートで 初めてライブで演奏された曲で この曲もドラムの重低音が心地よく、ブルースの香りのする曲です。残りの曲もペイジのギターと ボーカル、ベース、ドラムの絡み合うシンプルながらも聴かせてくれる曲ばかりです。この頃になると ペイジのギブソン・レスポールの音は初期の頃に比べて、distortion (ひずみ) のかかり具合が やや少なくなって来た感じがします。

最後の曲の Tea For One は 私のお気に入りで この時期にジミーペイジがこのようなブルースギターを聴かせてくれるとは思いませんでした。彼は 伝統的なブルースを自分なりにどう解釈できるか挑戦してみたと言っています。

この後、1979年8月に In Through The Out Door という ボンゾの急死により、最後のスタジオ録音となったアルバムがありますが、ジミーペイジの体調がすぐれず(スタジオに現れなかったらしい)、ジョン・ポール・ジョーンズ主導で行われたらしく、キーボード主体の音つくりがなされており、ブルース色もほとんど感じられない曲ばかりです。20世紀を代表する偉大なロックバンドであるLED ZEPPELIN の最後のスタジオ録音アルバムとしては やや物足りない作品だと私は思います。この後、CODA というアルバムが1982年に出ましたが、今までのアルバムに収録されなかった曲の寄せ集めで、他のオリジナルアルバムとは別に捉えた方がよいでしょう。

2010年12月12日日曜日

LED ZEPPELIN Ⅳ(LED ZEPPELIN)



LED ZEPPELIN Ⅳ( LED ZEPPELIN ) / 1971年11月8日発売(英)

 LED ZEPPELIN の粋を集めた最高傑作と評価されていますが、「Stairway to Heaven- 天国への階段」 が収録された 世の中で一番有名なZEP のアルバムと言った方が最も的確でしょう。

1 曲目はハイトーンのボーカルと独特のギターリフから始まる Black Dog ですが、複雑なリズムでボーカルとギターが絡み合う まさにハードロックの典型と言った曲でアルバムの1曲目にふさわしい曲です。この曲の始まりのリフは  ジョン・ポール・ジョーンズのアイデアとされています。このあたりから ZEP の作曲における彼の役割がだんだん大きくなって行き、後のアルバム Houses of The Holy, Physical Graffitiなどでは重要な役割を果たしていた様です。
2曲目の Rock and Roll は これこそ ZEP の曲の中でも一般の人に最も分かりやすい形の曲で モンスターロックバンドたるZEP の真骨頂です。彼らもこの曲を気に入っていたらしく、多くのコンサートで演奏しています。

そ して 「Stairway to Heaven- 天国への階段」 ですが、LED ZEPPELIN は知らなくてもこの曲を聴いたことのある人は多いでしょう(最近、某TVドラマの主題歌になっていました)。20世紀を代表するrock の名曲の人気投票でも1位または常に上位にランクされています。ジミーペイジは早くから「静かに始まって徐々に盛り上がってゆく長い曲」という曲の構想を 持っていたらしく、具体的な作曲は1971年初め、彼らが4枚目のアルバムを作成のため合宿したハンプシャーの古邸宅で進められたとされています。歌詞が 公開されたのはこの曲が初めてで ロバートプラントの作と言われています。
ZEPの魅力がすべて凝縮されたと言ってもよい曲で、前半のアコースティックな部分から後半のギターソロに移り、緊張感が高まり、やがて雄大なクライマックスに至るという劇的な展開はすばらしく、この曲を何度聴いても 飽きが来ない理由でしょう。

ロック界以外の音楽業界からも評価が高く、クラシック界の巨匠、ヘルベルト・フォン・カラヤンが 「私が オーケストラで演奏するとしても これ以上のアレンジを必要としない名曲」と絶賛したという有名な話があります。
ところで後半に移る部分の有名なギターソロは ギブソン・レスポールでなく フェンダー・テレキャスターを使ったらしいとされています。

アルバム後半の4曲は私はどうも好みではなく、アルバムトータルとしてみた場合、LED ZEPPELIN II の方を選んでしまいます。
こ の後、1973年にHouses of The Holy, 1975年にPhysical Graffiti を出すのですが、ブルースナンバーが少なくなり、特に 前者には1曲も入っていません。時代の流れと共にバンドも意図的に変わって行こうとしていたのかも 知れませんが、私の好みではありません。Houses of The Holy が出た当時、Dancing Daysの変則的な(変な)リズムには耐え切れずとても聴く気にはなれませんでした。当時、MUSIC LIFE という音楽雑誌があったのですが、新譜紹介の所に 誰だったか忘れましたが、Houses of The Holy を「なんだ これは」と一言書いていたのが 強く印象に残っています。
Physical Graffiti も続きの様なアルバムで私は好きになれませんでした。しかし、この2つのアルバムを高く評価している人も多く、これらを聴かないなら本当のZEPを理解し ていないと非難されるかも知れませんが、私が LED ZEPPELIN に期待していたものはブルースを主体としたハードロックであったのです。

2010年11月27日土曜日

LED ZEPPELIN III (LED ZEPPELIN)



LED ZEPPELIN III ( LED ZEPPELIN ) / 1970年10月5日発売(英)
 

 LED ZEPPELINは 一般に単なるハードロックバンドの一種であると誤解されやすいのですが、アコースティックギター中心のトラッド・フォークナンバーに も力を入れ、さらに中東風民族音楽的な要素も積極的に取り入れ、その音楽的独自性を高めて行きました。そのはじまりがこのアルバムと言ってよいでしょう。 B面は田舎の牧歌的な雰囲気を感じさせるアコースティック・ナンバーが収録されています。私はZEPのこういった路線変更が好きになれず、LPの頃はB面 は一度聴いただけで その後は全く聴くことがありませんでした。CDが発売されて全曲通して聴けるようになってからもアコースティック・ナンバーは好きに なれず 聴いていませんでした。やはり LED ZEPPELIN I, IIの轟音ブルースロックを継続して欲しかったと思いました。

さて 1曲目のImmigrant Song-移民の歌 ですが この曲は すごい曲です。中世のバイキング伝説を歌ったものですが、始まりの独特のリフがやたらと闘争心をかき立て血圧が急上昇してしまいそうです。

3 曲目の Since I've Been Loving You は マイナー調ブルースですが、ZEPの名曲の1つに挙げてよい曲と思います。ライブではかなりの回数演奏された曲の1つですが、公式ライブ版となった The Song Remains The Same(1973年N.YのM.S.Gでのライブ)での 演奏が私は一番気に入っています。この曲はbootleg(海賊盤)にも多く収録されています が、出来不出来の差が大きく、その日のジミーペイジの調子がすぐ分かってしまいます。1975年以降のライブでは 出だしのチューニングがあってないもの もあります。

このアルバムで私が気に入っている曲はこの2曲のみです。
ともかく このサードアルバムから彼らの音楽に対する考え方が変わって来た様で、単なるハードロックバンドというレッテルを貼られないように幅広い音楽を模索している様な気がします。
そして このような流れの中から あの有名なアルバムである LED ZEPPELIN Ⅳが生まれたのです。

2010年11月22日月曜日

LED ZEPPELIN II (LED ZEPPELIN)


LED ZEPPELIN Il ( LED ZEPPELIN ) / 1969年11月8日発売(英)


1stアルバムが発売され、まだ売れている同じ年に発売されたアルバムです。1stアルバムでの勢いは全く失われず同じコンセプトで作られています。 Stairway to HeavenやAchilles Last Standといった名曲の入った他のアルバムもありますが、アルバムトータルとして見た場合、個人的にはこのアルバムがNo.1であると思います。

何 といってもLED ZEPPELINの看板曲であるWhole Lotta Loveが1曲目です。このギターリフはZEPの曲の中でも最高で これにさらに強力になったベースとボーカルがかぶさり、さらにボンゾの爆裂ドラムが 入ってくる。一度聴いただけで興奮状態です。途中の ギターソロなどは本当にカッコよく、これを聴くとジミーペイジは 作曲、アレンジで すばらしい才能のある人で、ギターテクニックの すばらしい クラプトンもベックも音楽プロデュースの点ではペイジに及ばないと思われます。

この 曲に続くLemon Song, Heart Breakerのリフも一度聴いたら忘れられません。とにかくこのアルバムは全曲すばらしく、無駄な曲が一曲もありません。ジミーペイジ自身 シカゴブ ルースの父と言われるMuddy Watersに多大な影響を受けたというだけあって このアルバムは全曲ブルース系の曲で占められており、これが私がこのアルバムを一番気に入っている理 由でもあります。

2010年11月11日木曜日

LED ZEPPELIN I (LED ZEPPELIN)



LED ZEPPELIN I ( LED ZEPPELIN ) /1969年1月12日発売(英)
 

BeatlesのABBEY ROADを書いてほっとしたところで いよいよLED ZEPPELINです。
私がBeatlesと同じくらい好きなグループです。あのギターリフは強烈です。35年以上も頭の中を回り続けていて離れません。何かに集中しようとするとWhole Lotta LoveやImmigrant Songのあのリフが出てくるのです。50代半ばになるオジサンが聴いて今でもカッコいいと思ってしまう所がLED ZEPPELIN のすごいところでしょう。

1969年はABBEY ROADが発売された年でBeatlesが最高峰ではあったものの、この頃 既にジミヘンドリックスやクリームがロックの新しい流れを作っていました。しかし 彼らは ロックを大きく変えたのですが音楽がやや難解でマニア受けしたものの、一般大衆受けしてレコードが爆発的に売れたわけではありませんでした。ところが1969年1月にLED ZEPPELIN(日本ではツェッペリンとドイツ語読みしていますが、ジミーペイジはインタビューでは英語読みでゼッペリンと言っています)の1st アルバム、LED ZEPPELIN I が発売されると新世代のロックファンから熱狂的に受け入れられました。LED ZEPPELIN (以後ZEPと略す)は エリッククラプトンやジェフベックを生み出したYardbirds最後のギタリストとなったジミーペイジが各パートのメンバーをそろえて結成されたグループです。

ところがこのメンバーが偶然性も加わってオーソリティーとも言えるとんでもない力量のメンバーだったのです。ボーカルのロバートプラントはペイジの大音量のギターを物ともしない音域の広さと声量で世界のロックボーカリストの中でも最高峰に数えられています。ベースのジョン・ポール・ジョーンズのベースプレイは高く評価され、Beatlesのポールマッカートニー、The Whoのジョン・エントウィッスル、Creamのジャックブルースらと共に近代ロックベースの創始者とされています。そして何といってもドラマーのジョンボーナム(ボンゾというニックネームが有名)は ZEPの最大の魅力とされ、その強烈なドラミングは70年代以降のロックドラミングの原型にして理想像とされ、後世のドラマーに与えた影響は計り知れないものがあります。

一方でジミーペイジはこの頃の三大ギタリストと言われていますがその技量に対する評価は様々です。私はbootleg(海賊盤)を集める趣味があり、公式には出ていないZEPの1969年ぐらいから解散する1980年ぐらいまでのコンサートのbootlegを持っていますが、素人の私が聴いて本当にギターがうまいと思うのは1975年ぐらいまでで その後は 弾き間違いが多かったり、チューニングがおかしかったりとさんざんなコンサートが時にあり(もちろんbootlegの名盤と言われる1977年のListen to this, Eddieなどの名演奏もあるが)、他のメンバーにずいぶん助けられていることが結構あります。薬物中毒が原因とされていますが詳細は不明です。しかし 早弾きだけが得意のギタリストは他にいくらでもいますが、ペイジの優れているところは 後世に残るようなすばらしいギターリフを数多く作った作曲家としての才能やZEPのレコードをすべて自分でプロデュースしたプロデューサーとしての才能でしょう。

前置きが長くなりましたが、LED ZEPPELIN I は Yardbirdsのツアーで演奏した曲をレコーディングしたため わずか36時間で完成したとされています。ロックの名曲は,ギターリフ 一発で決まるというジミーペイジの言葉どうり、はじめから終わりまで一度聴いたら忘れられないリフの嵐です。とにかく一度聴いてもらいたい。今聴いても興奮してくるくらいなので デビュー当時のZEPがどれ程 画期的にカッコよかったかが想像できるでしょう。

このアルバムから1曲を選ぶとしたら Good Times Bad Timesでしょう。2007年の再結成コンサートでも1曲めに演奏されました。Communication Breakdownもいいのですが ボンゾの超人的なドラムが聴けるのでこの曲を選びます。
とにかく このアルバムは70-90年代の様々なロックのルーツと言ってもよいでしょう。
なお ジミーペイジと言えばギターはギブソンレスポールですがこのアルバムは全曲フェンダーテレキャスターを使っているそうです。

2010年10月28日木曜日

ABBEY ROAD (The Beatles)



ABBEY ROAD ( THE BEATLES ) / 1969年9月26日発売(英)




一番初めに持ってくるアルバムは これしかありません。
なぜなら 私の音楽の趣味も このアルバムからすべてが始まったからです。
私の人生で最も大切なものの1つがこのアルバムであり、このアルバムと共に人生を歩んできたと言っても大げさではありません。この偉大な音楽遺産を一度も聴いたことがないというのは人生における大きな損失であると言っても過言ではないでしょう。すべての人に是非一度は聴いてもらいたいと思います。
私はこのアルバムに対する並々ならぬ思い入れから ロンドンのアビーロードスタジオを7回も訪れているし、1993年には遂に第2スタジオに入ることができました(下の写真)。

発売は LET IT BEより先ですが、レコーディングされたのは こちらの方が遅いため、実質的にはビートルズ最後のアルバムと言えます。そして、SGT. PEPPERと並ぶ彼らの最高作と評価されています。レコーディングセッションの記録を見ると このアルバムでは LET IT BEで見られたグループ内の対立感情はほとんど鳴りを潜めたが、ビートルズの4人がスタジオに揃うのはベーシックトラックを録音する時だけでオーバーダブの大半はソロレコーディングの形で行われたとされています。

このアルバムの なにがそんなにすごいかと言うと、ビートルズというグループの全員がすばらしいソングライターであり、すごいプレイヤーであることを改めて実感させられるからです。ポールのベースプレイは以前から高い評価がありましたが、Something や I Want You でのベースラインはすばらしく、それだけでも曲になってしまいそうです。ジョージのギターもこのアルバムでは特に光っており ギブソン レスポールをメインギターに全曲にわたり すばらしいギターリフを作り出しています。普段目立たないリンゴのドラムも Come Togetherや The End では派手でサウンドの要となっています。また The End では初めてドラムソロを聴かせてくれます。
ビートルズがすぐれたコーラスを聞かせてくれることは案外 認識されていませんが、このアルバムではボーカル面でのコーラスの多用が目立っています。 Because や You Never Give Me Your Money. The End での彼らのコーラスは実にすばらしく、効果的です。

曲では後半(LPではB面)のバラードの連なりはすばらしく ローリングストーンズ誌に B面だけで SGT. PEPPERより価値がある と絶賛されました。圧巻は、本当にビートルズの最後の曲となった The Endでの3人のギターバトルです。G(ジョージ), P(ポール), J(ジョン)が P,G,J,G,P,Jの順でリードを取っています。ジョンのディストーションが強くかかったリードプレイが耳に残ります。そしてこの曲の最後の一節で And in the end, the love you take is equal to the love you make―の一言を残し、ビートルズはファンへの別れを告げたのです。
この曲が終わった後の奇妙な静けさが 印象的です。


上の写真は アビーロード第2スタジオ内部です。
私の左にあるピアノは ポール・マッカートニーも使ったことがあるそうです。